○戯論遊戯○

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■児童文学のススメ 「宮崎駿が選んだ50冊の直筆推薦文展」


  会場:西武池袋本店7階(南)=催事場(東京都)
  会期:2010年8月4日(水)~8月8日(日)

 岩波少年文庫創刊60周年と『借りぐらしのアリエッティ』公開を記念して、宮崎駿が選んだ少年文学50作品への直筆推薦文の展示が池袋でおこなわれるときいて、早速いってきました。
 展示は、宮崎が選んだ岩波少年文庫の作品への推薦文の拡大パネルを順に50枚みていくというもので、直筆の紙を拡大したパネルの横には監督の字が読みにくくても大丈夫なように、ちゃんとコンピュータで入力した書体が整った同じ文章のパネルが置いてありました。監督の推薦文には推敲のあとが残っていて、これが直筆であることの醍醐味だと思います。拡大されていない監督直筆のもとの紙もガラスケースに展示されていました。他に、宮崎駿のインタビューのパネルがあったり、この展示の隣りで小規模ながらも『アリエッティ』の設定資料の展示もやっていますので、会期は短いのですが関東住まいでジブリ好きの人は足を運んでみてはいかがでしょうか。




 ちなみに私がこの展示に来た一番の目的は、上の「ミニ本」です。展示の会場内で、岩波書店の本を買うか、ジブリショップの商品を税込1,050円以上購入すると上のミニ本が手に入ります。上の画像をみればわかるとおり、私は監督推薦の本を一冊買いました。
 ミニ本の内容は、宮崎駿の50作品への推薦文が全部載っているのはもちろんのこと、宮崎駿のインタビューも掲載されていて、直筆推薦文の展示のまとめになっています。はっきり言って、このミニ本があれば展示をみなくても・・・と思ってしまうところですが、ミニ本の方に掲載されているのは書体の整った紹介文がほとんどで、直筆文は一部しか見れないので、真の宮崎駿マニアは展示を見に行くべきでしょう。まあ、どっちにしても会場に行かなければ、手に入らないのですから、ヤフーオークションを利用して手に入れようとする人以外には関係ないことですね。
 ミニ本は、毎日先着500名限定ですので、早めに出かけることをオススメします。直筆推薦文展は東京の他に、今のところ兵庫、北海道、愛知、鹿児島と巡回する予定みたいです。詳しくは公式ホームページをご覧下さい。

会場の様子“スタジオジブリ広報部長・西岡純一のアリエッティ日記”より

YouTube - 「宮崎駿が選んだ50冊の直筆推薦文展」会場から #222

 ここから先は、地域的にまたは時間的に展示に行けない人のために、今回の展示のエッセンスをお伝えしたいと思います。
 まずは、宮崎駿が選んだ50冊は次のとおりでした。
 
   選・宮崎駿 岩波少年文庫の50冊
  (順番は宮崎駿が岩波少年文庫の全刊行タイトルから選び、
   読んでいった順のようです)

星の王子さま」          「チポリーノの冒険
バラとゆびわ」          「ムギと王さま
三銃士」              「秘密の花園
ニーベルンゲンの宝」      「ふしぎの国のアリス
シャーロック・ホウムズの冒険」「小さい牛追い
せむしの小馬」          「ファーブルの昆虫記
日本霊異記」           「イワンのばか
第九軍団のワシ」        「クマのプーさん
「風の王子たち」          「思い出のマーニー
長い冬」              「たのしい川べ
とぶ船」              「フランバーズ屋敷の人びと1
真夜中のパーティー」     「トム・ソーヤーの冒険
注文の多い料理店」      「ハイジ
海底二万里」          「床下の小人たち
長い長いお医者さんの話」  「ツバメ号とアマゾン号
飛ぶ教室」            「ロビンソン・クルーソー
宝島」               「森は生きている
みどりのゆび」         「ネギをうえた人
聊斎志異」            「ドリトル先生航海記
西遊記」             「小公子
クローディアの秘密」     「やかまし村の子どもたち
ホビットの冒険」        「影との戦い ゲド戦記1
まぼろしの白馬」        「ぼくらはわんぱく5人組
「ジェーン・アダムスの生涯」  「キュリー夫人
オタバリの少年探偵たち」   「ハンス・ブリンカー

 さすがに50冊分全部の宮崎駿の紹介文を掲載するわけにはいきませんから、この50冊の中から私が読んだことがある作品もしくは、宮崎駿のコメントで興味深かったものを4冊分ほど抜粋して引用します。


 ローズマリ・サトクリフ「第九軍団のワシ
 ***********************************************
   「歴史小説の傑作です。この物語を日本の古代の東北地方に
   移して、壮大なアニメーション映画を作れないものかと何度か
   試みました。人の姿のない古江戸湾の風景を想像したりして
   ワクワクしたりしましたが、まだ実現していません。
    とても好きな小説です。」
 ***********************************************
 軍事オタクとしても有名な宮崎駿監督。
その監督が選んだ本の中に、私はその趣味の薫りをこの「第九軍団のワシ」というタイトルから嗅ぎつけました。展示に来る前からこの本を買おうと決めてました。読むのが楽しみです。


 ヨハンナ・シュピリ「ハイジ
 ***********************************************
   「ぼくらがまだ若くて、たぶんあなたが生まれるずっと前に、
   ぼくらはこの本を原作にして、52本のテレビアニメを作りま
   した。ぼくらの先頭にいたのは、ひとりの若い演出家でした。
   もちろん今はおじいさんになっていますが、その人が有名な
   わりにあまり読まれなくなっていた原作に新しい生命を吹きこ
   んだのです。
    アニメより原作を本で読んだ方がいいという人がいます。
   ぼくも半分位そう思っていますが、この作品はちがうと思って
   います。見、読みくらべてみて下さい。ぼくらはいい仕事をした
   と、今でも誇りに思っています。」
 ***********************************************
 「若い演出家」とは、当時の高畑勲のことでしょう。
ジブリ美術館で宮崎駿が陣頭に立って、『ハイジ』展をおこなったことがあることからも、宮崎駿にとって『ハイジ』は特に思い入れのある作品なのがわかります。


 J.R.R. トールキン「ホビットの冒険 上・下」
 ***********************************************
   「イギリスのファンタジーの傑作。
    旅と冒険、財宝と魔法、勇気と戦いの書です。
   ところが、今ではなんだか色あせて感じられます。
    この本をヒントに、あまりにすごい数のロール
   プレイングゲームが作られ、魔物を一匹、二匹と
   やっつけて数えたりしすぎたのでしょう。それに
   もっと刺激的で細工をこらしたファンタジーが大量
   生産され、消費されたからだと思います。
   この本は喰い尽くされてしまったのです。」
 ***********************************************
 好きだからこそ苦言をいいたくなるのでしょうか。
私は岩波少年文庫ではなく、こっちの方で読んだことがあります。「ホビットの冒険」は「指輪物語」(映画『ロード・オブ・ザ・リング』の原作)の前日譚にあたる作品です。現在ハリウッドで「ホビットの冒険」の映画化も検討されているので、その予習としてもオススメです。「指輪物語」より、子供向けで短いので、読みやすい作品だと思います。


 アーシュラ・K. ル=グウィン「影との戦い ゲド戦記1
 ***********************************************
   「この物語ほど竜を見事に描いた本はありません。
   人間よりはるかに古いいきもの。壮大で邪悪で、
   気高い長虫。鋼のウロコにおおわれた身体の中では
   炎がもえています。
    この竜を形にすることがいまでもできません。
   ありきたりのコーモリの翼をもったトカゲにしたくない
   のです。かといって、日本や中国の竜ともちがいます。
   竜がこの物語の世界をとても奥深くしているのです。」
 ***********************************************
 宮崎吾朗監督の『ゲド戦記』を観る前に、私は原作の1~3巻を読みました。魔法に関しての考え方が新鮮でした。
 宮崎駿のコメントから、息子の映画に対する批判が暗に感じられます。


 ここまでは、岩波少年文庫のみを扱った直筆推薦文展についてお伝えしてきましたが、実は、宮崎駿が表紙や解説まで手がけた児童文学の本が存在します。それは、ロバート・ウェストールの「ブラッカムの爆撃機」です。


 ロバート・ウェストール「ブラッカムの爆撃機

 絶版状態にあったロバート・ウェストールの『ブラッカムの爆撃機』を復刊させるために、宮崎駿本人が企画を立て、解説イラスト(マンガ)を描き、作中の爆撃機の実物とウェストールの港町を見るためにロケハンまで敢行した宮崎駿の思い入れがつまった本です。ロケハンしただけあって、作中に出てくる爆撃機の全体像・内部構造まで細かく宮崎駿のマンガでは描かれていて、読書のための最良の手引きとなっています。その他にも解説マンガで、宮崎駿の戦争体験が語られたり、ウェストールと宮崎駿との仮想対談が描かれたりと読み所が多く、一冊の児童文学書の解説としては豪華すぎる内容だと私は思います。
 ロバート・ウェストールについてはスタジオジブリの機関紙「熱風」でも取り上げられたことがありました。

 児童文学以外で、宮崎駿が表紙などで関わった例には次のようなのがあります。


 サン=テグジュペリ「人間の土地

 岩波少年文庫の50冊の内の一冊に入っている「星の王子さま」の作者サン=テグジュペリの著書。表紙だけでなく、解説文も宮崎駿が書いています。


 ジェイムズ・H. シュミッツ「惑星カレスの魔女

 SF小説です。私は未読・未購入のため、なんで宮崎駿がこの小説の表紙を描いたのかよく知りません。宮崎駿好みの小説なのでしょうか。


 最後にこの記事の締めとして、宮崎駿のインタビューでの言葉を引用して終わりましょう。「これはわざわざ紹介しなくても、もう十分紹介されているから、僕がややこしい思いをしながら紹介する必要はないなと思った本は、いい作品だと思っても載せなかったりしました」というように、岩波少年文庫の50冊に入らなかった本の中にもいい作品は多くあるそうです。

      

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  1. 2010/08/05(木) 22:10:34|
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■エロティシズム・ガイド 相馬俊樹『禁断異系の美術館3 エロスのハードコア』

相馬俊樹『禁断異系の美術館3 エロスのハードコア

   さまざまな異端芸術を発掘・紹介する
   禁断異系シリーズ第3弾!
   今回は、よりハードコアでディープな表現をする
   アーティストをピックアップ!
   極限まで突き進んだラジカルな作品群を解題し、
   また、その源流としての古典ヌードを
   エロスの見地から読み解く。

 禁断異系の美術館シリーズでとりあげられる作家たちは、その作品のいくぶん異質な性質から、絵画を紹介するTV番組やポップな雑誌ではまずお目にかかれない。注意して情報を求めないと、通常私たちの検索にはかからない類の作家たちである。このシリーズの本をどれでもいいから、一読してみるといい。本当に"禁断異系”と冠が付くだけのことがあると、あなたは納得できるだろうから。現代のエロティック・アーティストを海外国内を問わずにコンパクトに解説・紹介し、まとめたものとしては私の知る限りでは唯一無二で、このような本を出版したこと自体が賞賛に値すると思う。シリーズ一冊目巻頭にある沙月樹京の言葉にもある通り、埋もれたり排除されがちな異系の作家たちと私たちが出会うきっかけにこのシリーズがなってくれるだろう。

 シリーズ三冊目の『禁断異系の美術館3 エロスのハードコア』は「エロスのハードコア」と言うだけあって、今までのシリーズの中でも一段と過激な内容である。『禁断異系の美術館1 エロスの畸形学』と『禁断異系の美術館2 魔術的エロスの迷宮』では国内外の絵描きのアーティストも紹介されていたが、『禁断異系の美術館3』では巻末に古典的な裸婦画についての3つの論考があるのを除いて、本物の女体を写す海外の写真家たちの紹介が主な内容になっている。紹介される写真集の中身はエロティックというよりもむしろポルノティックではあるが、相馬俊樹のエロティック・アートに関する豊富な知識をもとに記述される解説によって、アートとポルノの断絶が架橋され、エロよりも深いエロスの世界へと私たちを導いてくれる。この本で紹介される写真集のほとんどが日本では簡単には手に入らないものであるため、この本で紹介される写真集の図像をいくらか垣間見れるだけでもこの本の価値はある。
 作家や写真集の詳細についてはあえて語らないが、興味を持ったのだったら、ぜひ手にとって実際に自分の眼でみてほしい。きっとそこには、あなたの知らない魅惑的なエロティック・アートの世界が待っているだろうから。



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  1. 2010/05/12(水) 04:31:22|
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■感想 高畑勲『一枚の絵から 日本編』

高畑勲『一枚の絵から 日本編』岩波書店

  漫画映画監督である著者は、美術への強い関心から、
  こまめに展覧会に足を運び、図録を開き、たくさん
  の芸術作品をみてきました。そのなかから出会った
  “この一枚”について、縦横無尽に、古今東西を駆
  け抜けて書かれたのがこの本です。思いと興味はい
  ろいろに、一枚の絵から広がる豊かな世界。
  三十余作品をカラー図版とともにご紹介します。

 『一枚の絵から 海外編』の姉妹編。絵巻物から現代の画家の絵まで日本産の「絵」を時代・画材・画法を問わずに高畑がお気に入りのものをチョイスした本だ。「海外編」が良かったので、「日本編」も買うことにした。買う前は、「海外編」に比べてやや地味な印象があった「日本編」だったけれど、日本美術の面白さを知れて買ってよかったと思った。特に日本の近代絵画は、どうせ西洋の絵の二番煎じだろ、と思っていたが、なかなか面白い絵もあって不勉強なその認識を改めることにした。
 絵巻物に興味がある人はこの本とは別に『 十二世紀のアニメーション―国宝絵巻物に見る映画的・アニメ的なるもの』という本を高畑勲は出しているので、こちらもオススメ。


 以下、「日本編」でとりあげられていた絵の中から気に入った絵



伊藤若冲「果蔬涅槃図」
 果蔬(かそ)とは、今でいう果物や野菜のこと。釈迦の入滅を題材に、人が果物や野菜になっている。真ん中の二股大根がお釈迦さまだろうか。若冲は、京都の青物問屋の元主人だった。


小倉遊亀「観自在」
 浮遊する観音さま。みているこちらの頬が思わずほころんでしまう。気負いせずにみれる絵。


小早川秋聲「国之楯」
 戦争画といえば、どうしても藤田嗣治の「アッツ島玉砕」とかを思い浮かべてしまうが、こんな傑作があったとは知らなかった。文字通り「国之楯」となった英霊たちの聖画。

    

 関連当blog記事
感想 高畑勲『一枚の絵から 海外編』

テーマ:ブックレビュー - ジャンル:本・雑誌

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  1. 2009/12/26(土) 16:49:00|
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■感想 高畑勲『一枚の絵から 海外編』

高畑勲『一枚の絵から 海外編』岩波書店

  漫画映画監督である著者は、美術への強い関心から、
  こまめに展覧会に足を運び、図録を開き、たくさん
  の芸術作品をみてきました。そのなかから出会った
  “この一枚”について、縦横無尽に、古今東西を駆
  け抜けて書かれたのがこの本です。思いと興味はい
  ろいろに、一枚の絵から広がる豊かな世界。
  三十余作品をカラー図版とともにご紹介します。

 金欠なのについ誘惑に勝てずに買ってしまった。2940円。図版の印刷や著作権料などで色々お金がかかるためだろうか、普通の書籍と比べると高畑ファンの私でも、ちょっとお高いんじゃないのと思うぐらいだ。値段についてブツブツと言いたいことはあるが、内容に関しては文句ナシだった。さすが東大仏文卒だけあって、高畑勲は教養の香りがする美文を書く。しかも、読みやすい。絵をみる見方も(美術史の文脈上重要であるというよりも)あくまで絵そのものの面白さを重視しているため、美術にそんなに詳しくない私にも楽しめる本だった。この本に掲載されている絵は、高畑の個人的な好みの選択によっているため一般的には有名ではない絵も多くあったが、こんな絵や絵の見方があるのかという意味でいい勉強になった。


 以下、今回読んだ本で紹介されている絵の中から私が気に入ったもの



ドーミエ「ドラマ」
 舞台の上で何かが起こっている。それを見入るように眺める観客たち。この絵をみて、なぜだか私はデヴィッド・リンチの映画が思い浮かんだ。


クレー「蛾の踊り」
 擬人化された蛾の飛翔する一瞬。地上に圧し留めようとする引力が、蛾の身体全体に十字架の形をとって襲い掛かっているようにもみえる。



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  1. 2009/12/15(火) 03:26:19|
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