○戯論遊戯○

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■母親殺しの物語 村上春樹『スプートニクの恋人』

 この小説は、すみれによる「母親殺しの物語」である(と私は解釈した)。
 物語中では、すみれの母親はすでに亡くなっている。では、どうしたら、すみれの「母親殺し」は可能となるのか。それは、こちら側(地球=現世)からあちら側(スプートニク=あの世)の世界に行けばいいのだ。その際、必要となるのがロケット、ミュウ(ミューロケット)だ。性的な欲望のカタチをとってすみれとミュウはギリシャの島で同一となり、彼女らはあちら側の世界に行ってしまう。そして、ミュウはすみれの母親の分身としての役割も担うことになる。
 
  実際にはすみれは、始めと終わりのある作品をひとつ
  として完成させることができなかった。
(講談社文庫、21項)

 すみれがスプートニクに乗ったままでは、スプートニクは地球の周りを回り続けて物語は終わらない(始まりも終わりもない=循環)。「物語」としてこの小説が終わるためには、こちら側(地球)にすみれが帰還しなければならない。そのためには、こちら側(地球)とあちら側(スプートニク)とを結ぶ門を開く必要がある。すみれ(花)の分身の役割を持つにんじん(根)にその門の鍵(保安庫の鍵)を盗ませる。しかし、にんじんは鍵を盗む前に八個のホッチキスを盗んだ。それはなぜか。「八個」の「ホッチキス」を盗むことで、すみれの消えた「八月」のギリシャの島とスーパーマーケットのうらぶれた保安室とを結びつけるためである。あちら側とこちら側を結ぶ門をつくり、その鍵も手に入れた。これですみれは帰還できるのだろうか。

  門が出来上がると、彼らは生きている犬を何匹か
  連れてきて、その喉を短剣で切った。そしてそのまだ
  温かい血を門にかけた。ひからびた骨と新しい血が
  混じりあい、そこではじめて古い魂は呪術的な力を
  身につけることになる。
(26頁)

  小説を書くのも、それに似ている。骨をいっぱい集めてきて
  どんな立派な門を作っても、それだけでは生きた小説には
  ならない。物語というのはある意味では、この世のものでは
  ないんだ。本当の物語にはこっち側とあっち側を結びつけ
  るための、呪術的な洗礼が必要とされる
(26頁)

 犬=ライカ犬=ミュウ=母親を殺さなければ、すみれはこちら側には帰れない。「ぼく」はにんじんの「母親」との関係を終わらせ、その「母親」の性的欲望の断絶というカタチをとって、象徴的ににんじん(すみれの分身)の「母親」を殺した。

  ぼくとすみれはいうなれば似たもの同士だった。(22頁)
  あなたはわたし自身であり、わたしはあなた自身
  なんだって。
(317頁)

 「ぼく」がすみれの母親殺しを代行することで、すみれの「母親殺し」は完成した。こうして、すみれの「母親殺しの物語」と「スプートニクから地球に帰還する物語」はすみれがこちら側に戻ってきたことを示す電話のシーンで終わる。



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テーマ:読書感想文 - ジャンル:小説・文学

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  1. 2009/09/27(日) 02:17:27|
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Author:紫の豚

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