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■現代に生きる作家 未来を担う美術家たちDOMANI・明日展2010<文化庁芸術家在外研修の成果>


 <開催期間>
 2010年12月11日-2011年1月23日

 <展覧会について>
  文化庁は、将来の我が国芸術界を支える芸術家を支援する
 ため、若手芸術家を海外に派遣し、その専門とする分野について
 研修の機会を提供する、「在外研修(新進芸術家海外研修
 制度)」を昭和42年度から実施しています。
  「DOMANI・明日展」は、この制度の成果発表の場として
 これまで12回開催してまいりました。様々なジャンルから
 選出された、現在活躍中の12名の作家が各々の世界を
 展開します。美術界の明日を担う作家たちの多彩な表現が
 一堂に会する、貴重な機会をぜひお楽しみください。

 [出品作家](派遣年度順・五十音順)
  古郷秀一(彫刻)、三好耕三(写真)、遠山香苗(絵画)、
  近藤弘(陶造形)流麻ニ果(絵画)、深井聡一郎(彫刻)、
  鈴木涼子(現代美術)、赤崎みま(写真)神戸智行(日本画)、
  近藤聡乃(現代美術)、町田久美(絵画)、
  山口紀子(ファイバーアート)

 しばらく前に既に終了した展示ではあるが、印象深かったので今更ながらブログに書くことにする。この展覧会は六本木の新美術館で開催され、その詳細は上の<展覧会について>などをみてもらえばわかると思うが、国からの支援で研修として海外に行ってきた(もしくは今も行っている)美術家たちの作品の展覧会である。「在外研修(新進芸術家海外研修制度)」という制度があることをこの展覧会で私は初めて知ったけど、日本を出て海外で学ぶという点では古くは遣隋使からあるもので、夏目漱石も国からの指令で英国に留学して、その経験が漱石の小説に大きな影響を与えていることは有名だ。もしかしたら、この制度を利用した美術家の中から世界的に有名になるような芸術家がでてくる可能性もあるかもしれない。


ショップで買ったポストカード。<右上>鈴木涼子「ANIKORA-kawaii no.6」<左上>町田久美「手紙」<下>近藤聡乃「waiting-sketch」(部分)

 ここからは展示で気になった作家について語りたい。

 まずは、アニメのフィギュア風の姿態にリアルな顔をしたアンビバレントな作品で目を引く鈴木涼子について。その作品は、村上隆の等身大フィギュアを想起させるが(※鈴木涼子のは平面作品)、リアルな顔は作家自身のもので自画像の変形の一種ともいえる。実質、顔のすげ変えで人にインパクトを与える仕掛けをつくっていて初めて作品に対峙したときに意表は突かれはするものの、視線を顔から逸らせば、顔以外のフェティッシュを持つ人間にとってはよくできている。それに、顔と身体との違和感は(あるにはせよ)表立って目立たせないような努力がされているため、不快感はさほど感じさせない。彼女の「ANIKORA-kawaiiシリーズ」は可愛さを求める日本的な風潮を風刺する意図があるようだけど、彼女の技量がかえって、その意図を弱めているような気もする。それとは逆に、彼女の別シリーズの内臓系の肉で顔を覆った写真や中年のだらしないヌードを撮った写真などは見る者を忌避させてしまう傾向が強いように感じられ、私は鈴木涼子の作品に作り手と受け手との深い溝をみた思いがした。

 町田久美の名前は以前耳にして知っていたが、実際に作品を観たのは初めてだった。シンプルな太い描線に、控えめな彩色。言われなければ、彼女の絵が日本画の技法で描かれているとは気づかなかったかもしれない。彼女の作品の前に立つと、その絵の迫力に息を呑む。絵に描かれているのは子どものようであるが、かといって可愛げがあるわけではなく、どこか不敵な表情を浮かべていて、現実離れしている。その量感が伝わってくる姿は、キャラクター的というより人体的だ。捨象された画面だからこそ、その作家の力量が浮き彫りになる。
 図録で文化庁の野口玲一氏が語っているように、多様なメディアを用いて表現をおこない、表現媒体でのジャンルの分類から逸脱する作家が現れてきている(今展覧会では「現代美術」という分類がそのような作家にあてられている)。日本画の技法を用いながら、従来とは違う表現をおこなっている町田久美もまた、表現という意味ではジャンルの枠組みから逸脱している作家だろう。

 近藤聡乃は、マンガ、アニメーション、絵画と様々なメディアを使い分けて、表現をおこなっている作家だ。2010年にニューヨークのグッゲンハイム美術館が主催した「YouTube Play:A Biennial of Creative Video」で、彼女が制作したアニメーション『てんとう虫のおとむらい』のダイジェスト動画が上位25作品のひとつに選ばれるといったように近年注目されており、今展覧会で参加している作家の中で一番若いにもかかわらず、知名度の高い作家である(アニメーションという表現媒体の間口の広さも知名度の高さの理由のひとつであるのは間違いない)。展示内容は、完全版『てんとう虫のおとむらい』のアニメーションや絵画など過去作品もあったが、現在制作中の新作アニメーション『KiyaKiya』のための大量のスケッチが公開されていて、近藤聡乃ファンとしては期待が高まった。作家が自作について語るギャラリートークがあって、近藤聡乃の回に参加したので見聞きしたことを書くと、過去作品について『電車かもしれない』は900枚、『てんとう虫のおとむらい』は3000枚の動画が使用されているそうで、一枚一枚描く手間を考えると個人でアニメーション制作することの苦労が偲ばれる。新作アニメについて、『KiyaKiya』というタイトルは「胸がキヤキヤする」というデジャブーを意味する昔の日本の言葉に由来。そして、新作は「紙芝居」がキーポイントとなるそうだ。近藤聡乃のギャラリートークの中で、最も興味深かった話は、描く女の子のキャラクターは自身が太ったり痩せたりすると、キャラクターもそれにつられて太ったり痩せたりするという事。是非、近藤聡乃のキャラクター「英子」が白髪になるまで画業を続けてほしい。
 最近発売した青林工藝舎出版の「アックスvol.79」では、雑誌の巻頭に彼女のインタビューが掲載されていて、制作中の『KiyaKiya』についてはもちろんのこと、海外での生活についても語られているので、近藤聡乃ファンには購入をオススメする(表紙も近藤聡乃)。このインタビューの情報によると、新作アニメーションでは音楽は、サックス奏者のジョン・ゾーンが担当するとのことだ。

 ここまで記事を読んでもらえば、私が近藤聡乃目的で展示を観に行ったことがわかってしまったかもしれないが、それは事実として最後にDOMANI・明日展2010の総評を述べると、きっかけは近藤聡乃だったとしても、この展示のおかげで知らなかった同時代の現代に生きる美術家たちの作品に出会えることができ、その良い機会となったと思う(この記事で書かなかった作家の作品の中にも優れたものは、多く見受けられた)。



 関連当blog記事
越境する作家 近藤聡乃『電車かもしれない』&『てんとう虫のおとむらい』

テーマ:美術館・博物館 展示めぐり。 - ジャンル:学問・文化・芸術

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  1. 2011/03/04(金) 05:30:45|
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